
はじめに
SQL によるレセコンデータベースの直接編集を行うため、自己責任でお願いする。また、事前のバックアップ生成を推奨する。
背景
2026年7月診療分のレセプトを国保連合会・社会保険診療報酬支払基金へ提出したところ、多数のレセプトでベースアップ評価料の算定に関する問題があるとの連絡を受けた。
(なお、2026年6月診療分については、7月提出時に連絡は無かった。)
当院では、修正の大部分を SQL 処理にて行った。
電話で聴取したところ、あるいは、社会保険診療報酬支払基金のサイトによると、他にも同様の問題に直面している医療機関が存在するようであるから、レセコンが WebORCA である医療機関向けに当院での対応を共有する。

誤算定の内容
- 当院は、2026年5月まで外来・在宅ベースアップ評価料(1)を算定してきたため、2026年6月以降は「外来・在宅ベースアップ評価料(1)注5<より高い点数>」を算定するものとして届出を行っていた。
- 上記にもかかわらず、2026年6月以降「外来・在宅ベースアップ評価料(1)<従前よりも高点数ではあるが、注5と比して低点数>」を算定してしまった。
- このため、レセプト上の算定項目と、厚生局への届出内容に齟齬が生じ、エラーとなった。
誤算定を起こしやすい理由
WebORCA の自動算定仕様
WebORCA においては、外来・在宅ベースアップ評価料は明示的に診療行為として算定するものではなく、事前に施設基準情報を設定しておいて、初診料・再診料・訪問診療料を算定する際に自動で算定項目が挙がってくるという挙動をとる。



旧コードが有効
次に、コードに対応する WebORCA の算定項目と点数を表で挙げる。
なお、名称について、「外来在宅ベースアップ評価料(1)」までは共通であるから省略する。
また、「賃上取組」とされる4つのコードが新算定項目(=(1)注5)である。
| code | 名称 | 2026.05までの点数 | 2026.06以降の点数 |
| 180725710 | 1(初診時) | 6 | 17 |
| 180725810 | 2(再診時) | 2 | 4 |
| 180725910 | 3(訪問診療時)イ | 28 | 79 |
| 180726010 | 3(訪問診療時)ロ | 7 | 19 |
| 180853810 | 1(初診時) (賃上取組) | 23 | |
| 180853910 | 2(再診時) (賃上取組) | 6 | |
| 180854010 | 3(訪問診療時)イ (賃上取組) | 107 | |
| 180854110 | 3(訪問診療時)ロ (賃上取組) | 26 |
誤算定が起こりうる機序
- 制度の特性上、「(1)注5」を算定できる医療機関は事前に「(1) (無印)」を算定してきた医療機関である。
- そして、「(1) (無印)」のコードは引き続き有効であるから、施設基準情報を変更しなくても、2026年6月1日以降、引き続き自動算定が効いてきた。
- さらに、「(1) (無印)」を誤算定した場合においても単価は上昇しているため、個々の算定時に「診療報酬改定を反映して単価が上昇した」と誤認しやすかった。
修正前に行うこと
データベースの内容を修正する作業であるから、診療時間外に行われるようにされたい。
また、事前のデータベースのバックアップをお勧めする。
WebORCA が VM である場合は、スナップショットで構わない。
手動操作による訂正方法
WebORCA の照会画面から、対象月の受診患者の一覧を取得し、一人ずつ「誤算定の内容」-「誤算定を起こしうる理由」-「WebORCAの自動算定仕様」で示したスクリーンショットのように手動で訂正していくことになる。(実質不可能)
SQLによる一括訂正
操作環境の明示
以後、WebORCA server へ SSH 接続して操作する。
SQLユーザーの作成と権限付与
デフォルトユーザーの確認
WebORCA の仕様書通りにインストールした場合、ユーザー'postgres'が存在し、下記の様に「他のユーザーを作成する権限」を有するはずである。
sudo -u postgres psql -X -d postgres -c '\du+ postgres'
Role name | Attributes | Member of | Description
-----------+------------------------------------------------------------+-----------+-------------
postgres | Superuser, Create role, Create DB, Replication, Bypass RLS | {} |
update 権限を持つユーザーの作成 (なお、user=updater とする)
以下で psql へ入り
sudo -u postgres psql -X -d orca
orca=# が表示されるので
CREATE ROLE updater
WITH
LOGIN
NOSUPERUSER
NOCREATEDB
NOCREATEROLE
NOINHERIT
NOREPLICATION
NOBYPASSRLS;
とする。
対象テーブルへ user=updater の更新権限の付与
今回、編集対象となるテーブルは以下の2つであるから、これらへ update 権限を付与する。なお、確認作業のため、select 権限も当然付与する。
tbl_sryact:診療行為テーブルtbl_sryacct_main:診療会計メインテーブル
GRANT SELECT, UPDATE
ON TABLE public.tbl_sryact
TO updater;
GRANT SELECT, UPDATE
ON TABLE public.tbl_sryacct_main
TO updater;
さらに、以下でパスワードを設定する。
\password updater
パスワードは控えておくこと。
上記実行後、 \q でいったん psql を抜ける。
tbl_sryact にて特定診療月の誤算定コードを変更
まず、tbl_sryact にて、「ある月」(ここでは2026年7月とする)に誤コードで算定した内容を修正する。
なお、コードの変換対応は、前述の表の如く、
180725710 > 180853810
180725810 > 180853910
180725910 > 180854010
180726010 > 180854110
である。
作成した user = updater で psql へ入り直す。
psql -X -h localhost -U updater -d orca
さらに、以下とする。
UPDATE tbl_sryact
SET srycd1 = CASE srycd1
WHEN '180725710' THEN '180853810'
WHEN '180725810' THEN '180853910'
WHEN '180725910' THEN '180854010'
WHEN '180726010' THEN '180854110'
END
WHERE sryym = '202607'
AND srycd1 IN (
'180725710',
'180725810',
'180725910',
'180726010'
);
実行確認と追加処理の必要性の認識
WebORCA へ Web アクセスして、該当患者の会計照会を見ると、更新後のコード「賃上取組」へ変更されている。
ただし、点数が誤コードのそれのままである。よって、次項を行う。
tbl_sryacct_main にて特定診療月に算定する新コードの点数を修正
tbl_sryacct_mainにおいて、特定診療月(ここでは2026年7月診療分)の診療行為コードと点数を修正する。
UPDATE tbl_sryacct_main
SET
srycdtotal = CASE srycdtotal
WHEN '180725710' THEN '180853810'
WHEN '180725810' THEN '180853910'
WHEN '180725910' THEN '180854010'
WHEN '180726010' THEN '180854110'
END,
zaiten = CASE srycdtotal
WHEN '180725710' THEN 23
WHEN '180725810' THEN 6
WHEN '180725910' THEN 107
WHEN '180726010' THEN 26
END,
syuten1 = CASE srycdtotal
WHEN '180725710' THEN 23
WHEN '180725810' THEN 6
WHEN '180725910' THEN 107
WHEN '180726010' THEN 26
END
WHERE sryym = '202607'
AND (
(srycdtotal = '180725710' AND zaiten = 17 AND syuten1 = 17)
OR (srycdtotal = '180725810' AND zaiten = 4 AND syuten1 = 4)
OR (srycdtotal = '180725910' AND zaiten = 79 AND syuten1 = 79)
OR (srycdtotal = '180726010' AND zaiten = 19 AND syuten1 = 19)
);
終了後は \q で psql を抜けてよい。さらに、SSH 接続も終了してよい。
実行確認
WebORCA へ Web アクセスして、該当患者の会計照会を見ると、更新後のコード「賃上取組」へ変更されており、さらに点数も新コードに対応したものとなっている。
一括訂正後も一部手動修正が必要となる場合があり得る
公費併用患者では、一括訂正後に手動訂正が必要になる場合がありうる。
これは公費併用時には「レセプトに請求点数を記載するので、まずはその7-9割を請求する。さらに残りの公費併用部分についてレセプトに自己負担額を記載するのでその差額も請求する」という運用だからである。

ただし、当院の場合、公費の特性を考慮すると対象患者を10名以下へ絞り込むことができた。共有する。
難病医療費助成制度
これについては全例手動訂正を必要とした。対象患者の検出は次項の方法により併せて行われる。
大分県/大分市のこども医療費
大分県こども医療費助成制度では、「1医療機関ごと1日500円まで(上限:3歳未満は月2回、3歳以上は月4回)」とする制度が存在する。
また、大分市の制度として、ひとり親の場合にこどもの医療費を0とする制度が存在する。
今回の誤算定の訂正は、いずれも「請求点数を多くする訂正」である。一方、この制度では「1日500円まで」あるいは「そもそも0」とされている。
従って、訂正対象となる患者は、「誤コードで算定した際に、自己負担額が500円未満であった患者、ただし0円であったものは除く」に限られる。(例: 再診料+外来管理加算のみの算定かつ3割負担であったため、自己負担額が500円を割り込んだ)
より詳細に記載するのであれば、
a = 初診料・再診料・訪問診療料 の算定回数の合計
b= 自己負担額
とした場合に
「500a が b と一致しない」かつ「b が 0 でない」場合に手動訂正の対象となる。
.UKEファイルから対象患者候補を検出する方法
毎月提出しているレセプトファイル(.uke ファイル)は、csv ファイルそのものである。
そして、その記載は下記となる。
RE行:新しい患者レコードの開始RE行の第14列:患者番号KO行:公費併用に関するレコードKO行の第7列:公費併用時の患者自己負担額
従って、uke ファイルを excel で開いて、"「500a が b と一致しない」かつ「b が 0 でない」場合"の患者一覧を取得すれば、手動訂正の対象となる患者の一覧を得ることができる。
残りは excel 操作であるから、自力で行っていただきたい。なお、上記条件を codex に投げれば秒で回答を得られる。
補足 - 手動処理しないと患者から未収金を徴収できないことの影響 (開設者院長の意見)
一括自動処理を行っても、未収金とはならない
上記一括自動処理は、あくまでも「レセプトを正しく提出するための方策」である。
手動訂正を行わない限り、正誤コード間の患者自己負担額の増加分は未収金に挙がらない。
この金額は、1人1回の受診あたり、初診時6点差の1-3割=0-20円、再診時2点差の1-3割=0-10円である。原則これは、徴収できない。
開設者の負担により職員へ配分すべきである
そもそも、本政策の目的は、「医療機関で働く職員の給与の補助」である。行政機関側としては、届出と保険請求が行われる以上、本政策に沿った給与改善が行われているものと捉えるであろう。逆に、「医療機関開設者側の落ち度で、患者からの徴収額が減ってしまった」という事情は行政機関側の関知するところではないであろう。(当然医療機関職員も関知するところではない。)
従って、差額分の処理について、私は、開設者側の負担により「全額を正当に徴収したものとして職員へ配分すべき」と考える。
税理士等への確認を要する当院開設者の見解
発生主義で税務申告する以上、未収金に挙げることができなくても、債権を認識した時点で収入である。
私は、「全額を正当に徴収したものとして税務申告すべき」と考える。
税理士に確認する方針である。










