認知症外来 (もの忘れ外来) では、完治しうる認知症を見逃さない

本投稿のまとめ

認知症外来 (もの忘れ外来) では、初めに以下のような「完治しうる認知症」を必ず検索する。

・薬剤誘発性の認知症
・意識障害 (せん妄)
・てんかん性認知症
・内科的疾患: 内分泌異常による認知症、感染症、アルコール性認知症、代謝性疾患
・外科的認知症: 正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍
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どうして認知症外来 (もの忘れ外来) で、血液検査や画像検査を行うのか

認知症外来 (もの忘れ外来) では、初めに画像検査 (頭部CT や MRI), 血液検査を行います。
一方、認知症の診断基準には画像検査や血液検査の結果は一切入っていません。
どうしてこれらの検査をするのでしょうか?
結論として、「完治しうる認知症を見逃さないため」に行うのですが、これを解説します。

完全に治る認知症が存在する - 血液検査や画像検査、薬チェックで発見する

医師は患者さんの病気が何であるかを考える際、一般に疾患頻度の高い病気から考えていきます。
例えば「喉が痛くて関節痛がする」という患者さんが来られれば、まずはカゼを、季節によってはインフルエンザウイルス感染を考えるわけであり、いきなり10万人に1人しかかからないような珍しい病気から考え始めるはずはないわけです。

ここで、認知症のうち最も多いのはアルツハイマー型認知症、次に多いのはレビー小体型認知症です。
原則論にのっとればこれらの疾患から考えなければいけないのですが、実は認知症診療においてはこの原則を曲げなければなりません。
なぜなら、
・他の内科疾患が原因で認知症を来している場合、その内科疾患を治療すれば認知症が完治しうる
・他の外科的疾患が原因で認知症を来している場合、その外科的疾患を治療すれば認知症が完治しうる
・服用している薬剤が原因で認知症を来している場合、その薬剤を変更することで認知症が完治しうる
・一方で、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった変性疾患については完治させる治療法が現在のところ無い
という知見があるからです。
結論として、以下となります。
認知症外来で最も大事なことは、まず初めに外科手術や内科治療で完治する認知症を見逃さないことである。

具体的には、まずは下記の病気を検索します。

・薬剤誘発性の認知症
・意識障害 (せん妄)
・てんかん性認知症
・内科的疾患: 内分泌異常による認知症、感染症、アルコール性認知症、代謝性疾患
・外科的認知症: 正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍 ---(※)
これらの病気が見つかった場合は、まずはその病気の治療を行います。
※ 認知症外来で頭部CTを撮影したり、頭部MRIを撮像したりするのは、この段階で外科的認知症を検索するためです。
画像検査について

認知症外来で頭部CTを撮影したり、頭部MRIを撮像したりするのは、このような外科的認知症を検索するためです。

※ 治療可能な脳外科的な認知症例えば慢性硬膜下血腫,脳腫瘍,正常圧水頭症などを除外するために形態的画像検査 (CT/MRI)を実施することが望ましい。 (認知症疾患診療ガイドライン, 2017)

※ Filippi M, Agosta F, et al. EFNS task force: the use of euroimaging in the diagnosis of dementia. Eur J Neurol. 2012:19(12): e131-140

CT 「または」 MRI の使用が推奨されているため、当院では患者さんの経済的・時間的負担の少ない CT を使用する こととしています。


完全に治る認知症を否定してから、狭義の認知症を考えていく

上記のように、まずは完全に治る認知症を検索し、これらが否定された場合に初めて下記のような進行性の認知症を考えていくことになります。
・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭葉型認知症
・脳血管性認知症
・クロイツフェルトヤコブ病
・他の神経変性疾患による認知症 (進行性核上性麻痺, 大脳皮質基底核症候群, ハンチントン舞踏病)

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