目次
[0] 最初に一言で結論
脳神経内科は脳の細胞が壊れる病気・筋肉の細胞が壊れる病気 を扱う診療科である。
認知症(アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症など)やパーキンソン病、脳血管障害(特に脳梗塞/塞栓)が主な対象疾患である。
[1] 呼称について - 脳神経内科・神経内科・脳内科 はどれも同じ内容を示している
脳神経内科 神経内科 脳内科 全て同じ診療科を示している言葉と考えて頂いて結構です。
英語表記は department of neurology となります。
ちなみに本日の google 検索では以下のようなヒット数でした。
脳神経内科(724万件) > 脳内科 (592万件) > 神経内科 (115万件)
「神経内科」が最も少ないのがやや意外ですが、検索エンジン側の事情もあるのでしょう。
「脳神経内科」「神経内科」の呼称については大学や公的病院レベルで標榜されている実績があります。1例ずつ示します。
一方、本日検索し得た範囲内では、「脳内科」についてはまだ大学や公的病院レベルでの採用が無いようです。最近までは制度上、「脳内科」の標榜ができなかったことによると考えます。(良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号) 及び 厚労省医政局長通知(医政発第0331042号, 平成20年3月))
当クリニックでは、上記法改正と政令を踏まえて、屋号では「脳内科」、標榜科としては「脳神経内科」を用いています。
私見ですが、それぞれの言葉が与える影響として、以下の印象を持っています。
神経内科: 精神科や心療内科と間違えられやすい。(他の科の先生もよく間違えられていて、精神疾患(うつ病など)を適切に診断された上で御紹介いただいたりしてしまう。) (実は親にも間違えられていた)
脳神経内科: 脳神経「外」科の内科バージョンと言えば理解してもらいやすい。こう言えばさすがに精神科や心療内科とは間違えられにくい。「脳の細胞が壊れる病気を薬で治療する科」というイメージがわきやすい。
脳内科: そもそも 脳神経=脳 なのだから、「神経」っていう言葉は要らなく無い?とってしまおう。
蛇足ですが、昭和の頃よく見た「神経科」という標榜科については、上記法改正/政令により、現在では移行措置を除いて使用できなくなっています。
[2] 学会について
脳神経内科・神経内科・脳内科 どの言葉を用いるにせよ、次の学会となります。
[3] どんな病気を扱うのか
(a) 障害部位
神経内科は中枢神経 (脳や脊髄), 末梢神経, 筋肉の細胞が壊れる病気を扱う内科です。あくまでも身体の病気を扱う診療科ということになります。
対照的な診療科として、精神科・心療内科が挙げられます。これらの診療科は「心の病気」を扱う診療科と捉えられることが多いかと思われます。「心の病気」の特徴は「脳の神経細胞は健在。神経細胞と神経細胞を結ぶネットワークに障害を来している」です。(例外あり。また、微小レベルでの細胞障害を示す研究データも蓄積されつつあります。)
(b) 具体的な症状
運動麻痺: 体を動かしにくくなった。力が入りにくくなった。
感覚障害: 触られてもわからない。あるいは、軽く触られているだけなのに痛みが走る。あるいは、何もしていないのに正座をした後のようにじんじんする。
歩行障害: うまく歩けない。歩幅が狭くなった。急に止まることが難しくなった。転びやすくなった。
易疲労性: 疲れやすい。特に運動後に力が入りにくくなる。夕方になると物が二重に見える。
不随意運動: 手足や体幹が勝手に動いてしまう。
頭痛: (頭が痛い)
認知機能障害 (以下に分類, ただし全てを列挙しているものではない)
・記憶障害: 新しい事柄を覚えるのが難しくなった。
・注意障害: 注意力が散漫になった。
・視空間失認: 通い慣れた道で迷うようになった。アナログ時計の時刻を認識できなくなった。
・失行: 目的に沿った一連の動作ができなくなった。
・失計算: 計算が苦手になった。相手に悟られたくないので買い物ではいつも1万円札を出す。家に小銭が山のようにある。
・遂行機能障害: 計画立案-状況に応じて修正をしながら目標達成 という一連の動作ができなくなった。(ツアーではない旅行など)
精神症状
・高齢化後(概ね60歳以上)に初めて発症した、うつ症状: 食欲がない。眠れない。周囲の人に意地悪をされているように感じる <レビー小体型認知症の初期症状の可能性があります。当科の対象です>
(c) 疾患名 (疾患頻度の高いものを記載)
認知症 *1
軽度認知障害 *2
虚血性脳血管障害 (アテローム血栓性脳梗塞 / ラクナ梗塞 / 心原性脳塞栓症) *3
脳梗塞後遺症 *4
パーキンソン病
ビタミン欠乏症にともなう神経障害
*1 アルツハイマー型認知症, レビー小体型認知症, 脳血管性認知症, 前頭側頭葉型認知症, てんかん性認知症, ビタミン欠乏症による認知症, 甲状腺機能低下症による認知症 など
*2 厳密には現時点で本邦では疾患名ではありません。ヒトの状態を表現する言葉(例: 高齢者, 妊婦, 乳児)です。
*3 発症1ヶ月以内は急性期脳梗塞-亜急性期脳梗塞として、急性期病院での入院加療が原則です。
*4 慢性期加療 (脳梗塞後の抗血小板薬投与、心原性脳塞栓症後の抗凝固療法) を含みます。
[4] 診断した場合に他科へ紹介する疾患 (疾患頻度の高いものを記載)
急性期脳梗塞 / 急性期くも膜下出血 / 急性期脳出血: 脳神経外科 あるいは 基幹病院の神経内科 (入院での手術や点滴やカテーテルによる治療が必要です) (受付段階で急性期病院への転医を指示する場合があります)
水頭症: 脳神経外科 (手術が考慮されます)
慢性硬膜下血腫: 脳神経外科 (手術が考慮されます)
てんかん / てんかん性認知症: 脳神経外科 あるいは 基幹病院の神経内科・精神科 (脳波計のある施設で加療される必要があります)
血管炎症候群: 内分泌内科 (専門外です)
脳腫瘍・脊髄腫瘍: 脳神経外科 あるいは 整形外科 (手術が考慮されます)
頸椎症・腰椎症: 整形外科 (手術が考慮されます)
うつ病: 精神科 あるいは 心療内科(専門外です)
統合失調症: 精神科 あるいは 心療内科(専門外です)
人格障害: 精神科 あるいは 心療内科(専門外です)
アルコール依存症 / アルコール中毒: 精神科 あるいは 心療内科(専門外です)
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