生活習慣病-総論

生活習慣病-総論

まとめ

・生活習慣病は 高血圧症・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症 といった病気の総称
・それ自体にはあまり症状がない
・放置した場合の合併症は激烈であり、我々の自由・生命を奪う。
・生活習慣病になってしまうこと(原因部分)は、必ずしも自己責任とはいえない。加齢や遺伝的素因など自らの力ではどうしようもない要因が影響するからである。
・ただし、放置して合併症を起こすこと (結果部分) については自己責任の要素が大きい。

生活習慣病とは

「生活習慣病」という言葉は総称です。
高血圧症・脂質異常症(旧: 高コレステロール血症)・糖尿病といった個別の疾患を内包する概念です。

生活習慣病 (総称) 果物 (総称)
高血圧症 リンゴ
脂質異常症 イチゴ
糖尿病 バナナ
高尿酸血症 パイナップル

生活習慣病の原因と結果は分けて考える

生活習慣病を語る際に、下記の2つは分けて考える必要があります。

・どうして生活習慣病になるのか (原因)
・生活習慣病を放置するとどうなるのか (結果)

どうして生活習慣病になるのか (原因)

結論として、以下の3つの要因によって起こります。

加齢
不適切な生活習慣
遺伝的素因

加齢

生活習慣病は古くは成人病と呼ばれていました。統計学的に、年齢が上がるにつれて有病率 (人口に占めるその病気の人) が増えるためです。
従って、「生活習慣病は歳のせい」はある意味では正しい表現と言えます。

不適切な生活習慣

かつて成人病と呼ばれた総称が現在では生活習慣病と呼ばれているのは、次のような知識があるからです。

生活習慣病の発生には、加齢だけではなく、不適切な生活習慣が関与していることが明らかである。

具体的には、次のような不適切な生活習慣が、生活習慣病の原因となります。

運動不足
偏った食生活 (野菜が少ないなど)
喫煙

生活習慣病は、今や健康長寿の最大の阻害要因となるだけでなく、国民医療費にも大きな影響を与えています。その多くは、不健全な生活の積み重ねによって内臓脂肪型肥満となり、これが原因となって引き起こされるものですが、これは個人が日常生活の中での適度な運動、バランスの取れた食生活、禁煙を実践することによって予防することができるものです。

遺伝的素因

・夫婦で自営業をしているので、四六時中一緒にいて同じものを食べている。しかし、夫のみが高血圧である。
・太っている(すなわちたくさん食べている)のに、糖尿病ではない。
・やせているのに悪玉コレステロールが高い。

皆さんも上記のような不公平な例に遭遇したことがあると思います。
不公平が生じるのは、下記のような人体の作用に個体差があるからです。

・体内に入ってきた食塩をどれだけ捨てられるか (高血圧に関連)
・体内に入ってきたコレステロールをどれだけ捨てられるか (脂質異常症に関連)
・体内に入ってきた糖をどれだけ捨てられるか (糖尿病に関連)

これらは生まれてきたときから、個人によって異なります。正直、遺伝的素因自体は現状では治療ができません。
従って、「生活習慣病は自堕落な生活による自己責任」という発想は間違いです。

なお、現代では遺伝的素因の影響が強い方でも、その影響を無視できるほどに薬剤で生活習慣病を治療することが可能となってきています。

生活習慣病を放置するとどうなるのか (結果)

これについては、個別の疾患に関する研究データを追いかける必要があります。
我々(=現生人類)がもっている医学知識は全て、下記のような疫学研究の結果だからです。

血圧が○○以上の人は、△△以下の人と比較して、脳梗塞の発症が □□% 多い

本稿では抜粋のみ記載します。個別の疾患については、詳細ページに記載します。

生活習慣病の放置と合併症、失われる身体機能 (表)

放置する生活習慣病 合併症の例 合併症の症状 (例) 参照
高血圧症 1. 心血管病 (心筋梗塞・大動脈解離など)
2. 脳卒中 (脳梗塞・脳内出血など)
3. 認知症
1. 長時間歩けなくなる。あるいは突然死
2. 体の一部を動かせなくなる。あるいは突然死
3. 
これまでと同じように物事を判断できなくなる。
*1
*7
脂質異常症
(≒ 高脂血症)
1. 心筋梗塞
2. 認知症
1. 長時間歩けなくなる。あるいは突然死
2. 
これまでと同じように物事を判断できなくなる。
*2
*7
高尿酸血症
(=痛風)
腎障害 *6 週に10時間以上の透析通い *3
糖尿病 1. 心血管病 (心筋梗塞・狭心症など)
2. 脳卒中 (脳梗塞など)
3. 閉塞性動脈硬化症
4. 糖尿病性末梢神経障害
5. 壊疽
6. 糖尿病網膜症
7. 糖尿病性腎症
8. 認知症
1. 長時間歩けなくなる。あるいは突然死
2. 体の一部を動かせなくなる。あるいは突然死
3. 長時間歩けなくなる。
4. 痛む。あるいは発汗障害、立ちくらみ
5. 足の切断など
6. 目が見えなくなる
7. 
週に10時間以上の透析通い
8. 
これまでと同じように物事を判断できなくなる。
*4
*7
睡眠障害 認知症 (高齢女性において) これまでと同じように物事を判断できなくなる。 *5

*1 高血圧治療ガイドライン2014 (JSH2014), 日本高血圧学会
*2 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012, 日本動脈硬化学会
*3 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版2010, 日本痛風・核酸代謝学会
*4 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2016, 糖尿病治療ガイド2016-2017, 日本糖尿病学会
*5 Yaffe K, et al. Sleep-disordered breathing, hyposia, and risk of mild cognitive impairment and dementia in older women. JAMA. 2011:306(6):613-619.
*6 メタボリックシンドローム,慢性腎臓病(CKD),高血圧・心血管系疾患との関係においても注目されている。
*7 認知症疾患診療ガイドライン 2017, 日本神経学会

各生活習慣病の具体的な診療方針については表中のリンクからサブページを参照ください。

診断はできる。放置した場合の危険性の説明もされた。治療はあるのだろうか?

いくら診断が適切になされても、「治療がないので放置するしかありません。合併症が起きないようにお祈りします」では無価値です。

現代では、下記のいずれの生活習慣病 (及び関連疾患) についても科学的根拠のしっかりした治療が存在します。

詳細ページへのリンクですので、ご利用下さい。

・高血圧症
・脂質異常症
・糖尿病
・高尿酸血症

生活習慣病の診療の目的

当院では以下を目標に生活習慣病の治療を行っています。

生活習慣病のコントロールを適切に行う。
これにより、重大な合併症(心筋梗塞や脳梗塞や認知症)の出現を抑制する。
最終的には地域の健康寿命を延長させる。

「健康寿命」についてより詳しく

日本人の平均寿命は伸びている。

現在の日本人の平均寿命は男性 80.98年, 女性 87.14年 といずれも過去最高を更新しました。
(厚生労働省.「2016年簡易生命表」)

健康寿命という考え方

世界保健機関(WHO)は「健康寿命」という概念を提唱しています。健康寿命とは、「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」とされています。
(WHO定義 2000年, 日本語訳は厚生労働省ホームページによる)

平均寿命は伸びているが、健康寿命はわずかにしか伸びていない。

(健康寿命のデータが存在する期間で考察します。)
平均寿命は平成13年からの10年間で 男性で 1.48年, 女性で 1.37年 延びています。
一方、同期間での健康寿命の延びは、男性で 1.02年, 女性で 0.97年 に過ぎません。
(平均寿命: 簡易生命表 あるいは 完全生命表. 厚生労働省.)
(健康寿命: 健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究)

つまりは、寿命は延びているものの、不自由を抱えて生きる期間も同様に延びているということになります。
当然これは望ましい状態ではありません。「健康に長生き」がベストであるのは間違いないでしょう。

健康寿命は延長できるのか? → 生活習慣病のコントロールにより期待できる。

健康寿命を延長するために、体が動かなくなったりこれまでと同じように物事を判断できなくなったりする「合併症の出現」を抑えることが必要であるのは明らかです。
そして、「合併症の出現」を抑えるために生活習慣病のコントロールが重要であることを示す科学的根拠は大量にあります。

各生活習慣病の具体的な診療方針についてはメニューからサブページを参照ください。
生活習慣病についての記事一覧
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当ページ内の 生活習慣病 (下記を含みます)

・高血圧症
・脂質異常症
・糖尿病
・高尿酸血症

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