高血圧症

高血圧症

まとめ

・高血圧症の治療目的は合併症の予防である。

・予防目的の合併症として、脳卒中、心臓病、腎臓病、大血管疾患が重要。

・高血圧症が認知症の危険因子であることも確実とされている。

・高血圧治療ガイドラインには、以下について最新の知見が記されている。

どのような人の血圧を
どのような方法で
どのレベルまで下げる

と、合併症の予防効果が最大化されるか

よって、治療ガイドラインに沿った診療計画を立てることが重要である。

当院では、最新版の治療ガイドラインに準拠し、脳神経内科が脳卒中・認知症の予防を主目的に、高血圧症の治療にあたっている。

高血圧症治療の目的は合併症の予防である

合併症 = 脳卒中, 心臓病, 腎臓病, 大血管疾患, 認知症

現時点で我々(=人類)は下記知見を持っています。

至適血圧 (収縮期血圧 120mmHg 未満 かつ 拡張期血圧 80mmHg 未満) を超えて血圧が高くなるほど、全心血管病、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクは高くなる。

高血圧治療ガイドライン2014 - 日本高血圧学会

認知症の危険因子として・・・(中略)・・・血管性危険因子 (高血圧, 糖尿病, 脂質異常症)・・・(中略)・・・などがある.

認知症疾患診療ガイドライン2017 - 日本神経学会

中年期の高血圧は高齢期の認知症や認知機能低下の危険因子であるため, 認知症予防の観点から積極的な治療が推奨される.

認知症疾患診療ガイドライン 2017 - 日本神経学会

従って、高血圧症の治療目的は、高血圧症を放置することで合併する、脳卒中(*1)、心臓病(*2)、腎臓病(*3)、大血管疾患(*4)、認知症を予防することにあります。

*1 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など
*2 心筋梗塞など冠動脈疾患、心肥大、心不全など
*3 腎硬化症など
*4 大動脈瘤、動脈硬化性末梢動脈閉塞症など

高血圧の放置と心血管病

集団の血圧を、至適血圧(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満)にコントロールした場合、

40-64歳の集団においては、心血管病死亡の割合は 60.3% 減少させられる
前期高齢者 (65-74歳) については、49.3% 減少させられる
後期高齢者 (75-89歳) についても、 23.4% 減少させられる
ことが推定できてきます。

Blood pressure categories and long-term risk of cardiovascular disease according to age group in Japanese men and women.

結論として、高血圧を放置すると心臓を痛めて死亡しやすくなります。

高血圧の放置と脳卒中

上記「高血圧の放置は心臓病由来の死亡率をかなり押し上げている」という研究結果は衝撃的です。
ですが、全く同じ論文において、
全心血管病死亡の50%は血圧高値に起因する
脳卒中死亡の52%は血圧高値に起因する
と評価されています。
従って、高血圧の放置は心筋梗塞だけでなく、脳梗塞・脳出血の原因であることを記憶しておく必要があります。
結論として、高血圧を放置すると脳を痛めて死亡しやすくなります。

高血圧の放置と認知症

高血圧治療ガイドラインには書かれていないのですが、認知症疾患診療ガイドライン側で高血圧症が認知症の危険因子であることが注意喚起されています。

認知症の危険因子として・・・(中略)・・・血管性危険因子 (高血圧, 糖尿病, 脂質異常症)・・・(中略)・・・などがある.

認知症疾患診療ガイドライン2017 - 日本神経学会

さらに、特に中年期については、

中年期の高血圧は高齢期の認知症や認知機能低下の危険因子であるため, 認知症予防の観点から積極的な治療が推奨される.

認知症疾患診療ガイドライン 2017 - 日本神経学会

として、特に治療の重要性を説いています。

高血圧症が認知症の危険因子であり、逆に高血圧症の治療により認知症の発症リスクが減少することには留意するべきです。

それぞれの診療科が、合併症予防の立場から高血圧症の治療を行っている

高血圧症という病気は、

当科(脳神経内科)や脳神経外科: 脳卒中や認知症を予防したい

循環器内科: 心臓病の予防をしたい
心臓血管外科: 大血管疾患の予防をしたい

という観点で、それぞれ治療にあたっていると言えます。

逆に、どこの診療科が専門であるかは決めがたい疾患です。
既に合併症を来している方はその診療科で高血圧症についても治療をされると良いと思われます。

認知症を来している → 脳神経内科
脳梗塞を起こしたことがある. 脳出血を起こしたことがある → 脳神経内科, 脳神経外科
心筋梗塞を起こしたことがある → 循環器内科
血管のバイパス術を受けた → 心臓血管外科

一方、まだ合併症を起こしてない方については、どこの診療科で治療するのかについては重要ではありません。
重要なのは「現時点で統計学的に最良とされる治療が行われているかどうか」です。

高血圧治療ガイドラインには、「現時点で統計学的に最善とされる治療」が記載される

高血圧症の治療の目的は上記のように「合併症を予防すること」にあるわけであり、血圧を下げることそれ自体は目的ではありません。血圧を下げることは、合併症予防という目的達成のための「手段」に過ぎないわけです。

従って、「『どのような手段で』『どの数値まで』血圧を下げたときに、合併症の出現が最小化されるのか」は常に検証・議論されなければなりません。

幸いにして、本邦ではこの問題に対する研究が常に行われ、統計学的データとして蓄積され、さらには論文として発表されています。そして、ガイドライン作成のプロセスでは、この研究・統計学的データが科学的根拠の高さ (evidence level, エビデンスレベル)により分類され、 治療の推奨グレードが設定されます。

つまり、本邦では「最良の高血圧症治療」というものが常に探求され、5年ごとにガイドラインにまとめられている、ということになります。

治療ガイドラインは、研究結果の集大成。現時点で統計学的に最良の治療を示す。

当院での最新診療ガイドラインへの適応状況

当院では、最新版の高血圧治療ガイドライン(*1)に準拠した診療を行っています。

*1 高血圧治療ガイドライン2014 [JSH2014] (日本高血圧学会) / 次回改訂は2019年予定

最新版ガイドラインによる変更点 (*2)

*2 著作権の関係上、列挙はできませんし、具体的な薬剤名・数値の言及も行えません。

例えば以下の点が改訂前 (JSH2009) と変更になっています。
・一部論文が引用対象から削除された。
・血圧のコントロール指標として、家庭血圧を診察室血圧よりも重視。
・若年・中年の降圧目標が変更。
・β-blocker が第一選択薬とならなくなった。
・高尿酸血症が存在しても一部の利尿薬を使用できるようになった。
・脳血管障害合併高血圧の降圧目標が変更 / 期間として亜急性期が明記された。
・高齢者の降圧目標値、用いるべき治療薬に言及 / 変更

当院では上記のような変更点にも既に留意し、「現時点で統計学的に最良」とされる治療に努めています。

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